足達英一郎

OECD 多国籍企業ガイドラインが改訂された。「人権」の項目は、「企業は、他者の人権を侵害することを回避し、自らが係わる人権に関するマイナス影響に真正面から取組んでいくという意味で、人権を尊重すべきである」、「企業は、人権尊重を誓約する方針を作成すべきである」、「企業は、人権デューデリジェンスを実施すべきである」などの記述で構成されている。「人権デューデリジェンス」は新しいキーワードで、企業が自らの活動が人権に与える実際的あるいは潜在的な影響を定期的に評価し、その結果を事業活動に取り込めるよう内部統制システムを構築し、実行状況を追跡・報告して、改善措置に結びつけることだとされる。 「人権侵害」というと、日本企業では、たとえば従業員の出身などに起因して差別するといったことが連想されやすいが、多国籍企業には、紛争地域への事業活動の関与、保安要員 (例えば途上国の工場における警備員) の行動、原材料を調達する鉱山における先住民配慮のあり方までが問われる。例えば、欧州の公的年金のなかには、中国トラックメーカーが国連のスーダンに対する武器禁輸決議に違反する行動をとったとして、そのトラックメーカーに出資する日本企業を投資対象から除外するケースも生まれている。